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東京地方裁判所 昭和26年(行)53号・昭26年(行)52号 判決

原告 田代平 外一名

被告 関東信越国税局長

一、主  文

被告の決定した原告田代平の昭和二十四年度の所得金額三十万四千円中金二十万四千七百円を超える部分はこれを取消す。

原告田代平のその余の請求はこれを棄却する。

原告鈴木善一の請求は棄却する。

訴訟費用中原告田代平と被告間に生じた分は三分しその一を被告の負担としその二を原告田代平の負担とし、原告鈴木善一と被告間に生じた分は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は(一)被告が原告田代平の昭和二十四年度所得額についてなした審査決定を変更しこれを金十四万三千七百四十八円と訂正する訴訟費用は被告の負担とする。(二)被告が原告鈴木善一の昭和二十四年度所得額についてなした審査決定を変更しこれを十万七千八十八円と訂正する。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、

その請求原因として次の通り陳述した。

(一)  原告田代平の請求原因。

原告田代は所轄氏家税務署長に対して昭和二十四年度所得額を金十四万三千七百四十八円として確定申告をしたところ右税務署長は昭和二十五年二月二十六日右所得金額を金三十三万九千三百円と更正決定をしたが原告田代は右決定に不服につき被告に対し審査を請求したところ被告は昭和二十六年五月二十一日右所得金額を三十万四千円と審査決定し右決定書は同年六月七日原告に送達されたが原告は右決定に対して不服であるので本訴請求をすると述べ。

原告田代は被告の主張の審査決定の基礎事実に対し左の通り主張した。

被告は原告田代の事業所得の算定方法として消費電力量を基準としているが原告の昭和二十三年度の消費電力量は三〇九五キロで同年度の所得額は八万九千二百九十一円と査定された。しかるに昭和二十四年度の右電力量は六三〇九キロで右前年度の約倍であるから右所得額も倍の十七万六千三百八十二円であるべきを何等根拠なくして所得額を三十万四千円とした。又被告の決定した右所得額の中には農業所得として金九万九千三百三十二円を計上してあるが昭和二十四年度は原告の長男壮が農業経営をしたものであるから右農業所得は当然右長男壮の所得であつて原告平の所得とすべきでないと述べた(証拠省略)。

(二)  原告鈴木善一の請求原因。

原告鈴木は所轄氏家税務署長に対して昭和二十四年度所得額を金十万七千八十八円として確定申告をしたところ右税務署長は昭和二十五年二月二十日右所得額を金十八万三千百円と更正決定したので原告は右決定に不服であるので同年三月六日被告に対し審査の請求をしたところ被告は昭和二十六年五月二十一日原告鈴木の昭和二十四年度の所得金額を金十九万八千五百円と審査決定をなし右決定の通知は同年六月七日原告に送達されたが原告は右決定に不服であるのでその変更を求めるため本訴請求をしたと陳述し、

被告主張の審査決定の基礎たる事実に対し次の通り主張した。

(イ)  原告鈴木の農業所得の算定について。

一、被告は原告の田畑による所得を算定するために同原告居住部落について調査し原告田代平に対する調査を基本とした旨主張するが右田代平は同村ではあるが大字が違うし部落も異なり一里以上も距つているから右田代平に対する実地調査を基本として原告鈴木の所得を算定することはできない。

二、水田には乾田と濘田とあり濘田は乾田より収穫が劣つていることは公式の原則であるのに被告は下江川村大字志島の田に乾田と濘田も平均して田一毛田一反当り二千六百五十円、田二毛田一反当り二千五百六十八円、普通畑一反当り六千円の所得ありとして算定したのは不当である。

三、昭和二十四年度産米超過供出代金一千三百九十九円一銭同麦超過供出代金一万二千六百九十三円十五銭同馬鈴薯超過供出代千三百八十三円九銭合計金一万六千四百七十九円二十五銭は政府から支払を受けたのが昭和二十五年五月中旬である故昭和二十四年度の所得にはならない。

(ロ)  営業所得の算定について。

一、被告は昭和二十四年三月末日までの電力の使用量を算定するのに同業者五名について標準率を独善的に算出しているが電力には三相電力と単相電力とがありその力量に差異がある故収入面にも甚しい差異がある。

二、被告は米を四斗、麦を五斗を以て一俵としているが、原告の地方では品質の良いものを供出して残りを自己の消費米とするため玄米では四斗三升を一俵、大麦は五斗六升を一俵、小麦は四斗五升を一俵としている。

三、被告は消耗品として石油について主張しているが配給の石油は被告主張の通りであるが配給量は僅かでその他は闇値で購入しているから全てについて配給があつたものとしての算出は事実に反する。

四、公租公課の中、地租税附加税、家屋附加税、牛馬税第二種事業税は何故農業経営の必要経費にならないか。

五、固定資産の減価償却について原告は製麺干器を審査請求の際は書き落したので本訴で主張したものである。

六、作業衣について原告は農業と精米、精麦精粉麺業を兼営する者であり且当時は配給が少量であつたから被告の右現実を無視した主張は当らない(証拠省略)。

被告指定代理人は原告等の各請求を棄却する訴訟費用は各原告の負担とするとの判決を求め答弁として陳述した事実の要旨は次の通りである。

(一)  原告田代平の請求原因に対する答弁。

(イ)  原告田代から昭和二十四年度分の所得について原告主張の通り確定申告書の提出のあつたこと、(しかし右申告による所得金額は十九万二千円であつて十四万三千七百四十八円ではない)これに対し原処分庁が更正決定をなし、原告から審査請求があり、これに基き被告が原告主張の通りの審査決定をなしその旨の通知を原告にしたことは認める。

(ロ)  被告は右原告田代の昭和二十四年度所得額の審査決定の基礎として次の通り主張した。

(ハ)  原告田代の精米精麦精粉製麺加工業の営業所得。収入二十七万七千二百八十円原告の営業所得については実地に調査したが原告は営業に関する所得を算定すべき備付帳簿がなく資料も不完全で所得の実態を把握することができなかつたので使用電力量を基礎として収入算定の根拠として所得を推計した。原告は使用電力量は六千キロワツトとして主張しているが被告の調査の結果は六千三百九キロワツトとなる。しかして原告主張の使用電力量の比率による一キロワツト当りの加工賃は四十三円九十五銭になるから合計二十七万七千二百八十円となる。これに対する必要経費の支出金額は公租公課三万二千六百十円、機械減価償却方法は取得価格は原告本人の申立により製粉機七万円、製麺機二万円精麦機一万円精米機三千円、発動機一万五千円計十一万八千円、これに対し定額法による償却額の計算の基礎として右の中一割を控除した金額を十万六千二百円とし耐用年数を二十五年として一ケ年の償却額を四千二百四十八円となし、家屋工場の取得価格二万三千五百円につき定額法による償却の基礎価格二万一千百五十円耐用年数を二十年として償却額一千五十八円とし、その他(消耗品等)として金三万一千四百八十四円合計金六万九千四百円を差引控除すると残額は金二十万七千八百八十円(原処分庁の決定額は二十万四千七百円)となる。

(ニ)  原告田代の農業所得は昭和二十四年度産水稲面積一町四畝二十五歩、生産石数二十四石二斗七升水田裏作面積一反八畝二十四歩、畑作面積三反五畝歩これに農業所得標準率を右水田石当り金二千六百五十円、二毛田(裏作の分)一反歩二千五百六十八円畑一反歩七千九百円をそれぞれ乗ずると田地の収入六万八千九百三十七円、畑二万七千六百五十円附随収入二千七百四十五円以上合計九万九千三百三十二円となる。右算定の所得額によると原処分庁の更正決定額以上となるが審査決定額は昭和二十六年五月二十一日付を以て右算定額以下の金三十万四千円と決定した。なお原告田代は昭和二十四年度の農業所得はない。即ち長男壮が同年度は農業経営をしたと主張するけれども、企業における所得が何人に帰属するかはその企業の支配関係と資金関係によつて判定される。本件における昭和二十四年度の農業経営は (一) 原告田代が前年まで継続して農業経営の主体であつた。(二) 農業協同組合には原告田代平が加入して長男壮は加入していない。(三) 農業についての事業税は原告田代平が納税者である。(四) 農業組合における預金によると原告田代平名義で農作物の代金が積立られている。(五) 田畑は原告平の所有名義になつている。(六) 右農地について原告平と長男壮間に賃貸借等の法律関係がない。(七) 生計関係は保有米を一括して確保している。以上の事実によつて原告平が農業経営の主体であることが明かであると陳述した(証拠省略)。

(二)  原告鈴木善一の請求原因に対する答弁。

(イ)  右原告は昭和二十四年度の所得額について所轄税務署長に対し金十万七千八十八円として確定申告をなし、同税務署長は昭和二十五年二月二十日右所得額を金十八万三千百円(その後脱漏があつたとして金十九万八千五百円に増額決定された)に更正決定がなされ、原告がこれについて昭和二十五年三月六日被告に対し審査の請求をなしたところ被告は昭和二十六年五月二十一日右所得額を金十九万八千五百円で審査決定しその旨の通知を同年六月七日原告にしたことは認める。

(ロ)  被告は右原告鈴木の昭和二十四年度所得額十九万八千五百円の審査決定の基礎を次の通り主張した。

(ハ)  原告鈴木は昭和二十四年度において精米、製麺等の加工業及農業を営むものであるがその収支関係を明確にする帳簿記録等が存在しなかつたので後述のような推計方法によつて所得金額を算定した。

(ニ)  農業所得の算定。

原告居住部落の調査によつてえられた農業所得標準率に基くと左の通りになる。

(甲)  一毛作田一六石三六、石当り二千六百五十円計四万三千三百五十四円、二毛作田五畝二八、反当り二千五百六十八円、計千五百二十三円、普通畑五反九畝、反当り六千円、計三万五千四百円

右合計八万二百七十七円

(乙)  附随収入

俵代千三百七十五円

鶏六千円

豚六千七百九十七円

右合計金一万四千百七十二円これは原告の確定申告による。

(丙)  その他昭和二十三年産 小麦追加払       五百七十二円

同          大麦追加払       八十六円二十銭

同          米 追加払       四百十一円九十五銭

同          生甘藷超過供出代    三千百四十一円十四銭

同          干甘藷超過供出代    二千八百九十円二十七銭

同          とうもろこし超過供出代 三百二十六円二十七銭

昭和二十四年産    米超過供出代      一千三百九十九円一銭

同          麦超過供出代      一万二千六百九十三円十五銭

同          馬鈴薯超過供出代    一千三百八十七円十銭

右合計二万二千九百六円九銭

右の収入はいずれも昭和二十四年度に支払を受けたものであり且右昭和二十三年度の分は必要経費は全部同年度分から控除されてあり且昭和二十四年度分は超過供出の報償金である故前記の標準率による所得以外のものである。以上の通り昭和二十四年度の農業所得の合計は金十一万七千三百五十五円九銭である。

(ホ)  営業所得の算定。

営業収入の調査に当つては帳簿その他の資料がなかつたので電力使用量によつて推定した。しかして原告鈴木の昭和二十四年一月一日から同年三月までは正確の使用量を把握できなかつたためこれも推計した。同原告の昭和二十四年四月から十二月までの電力使用量は調査の結果二千八百三十七キロであることが判明した。同年一月から同年三月までの分の算出方法は同地方における同業者五名を抽出しこれ等の業者の同年三月以前と同年四月以降の分の使用量の比率を算出しこれによつて同原告の使用量を推計した。即ち右同業者五名の同年一月から三月までの使用量合計は三千七百十九キロ、四月から十二月までの分の使用量合計は一万五千百九十一キロであり、前者の後者に対する比率は二十四パーセントである。よつて原告の四月から十二月までの使用量は従前の通り二千八百三十七キロであるからこの二十四パーセントは六百八十キロであるからこれを同原告の一月から三月までの使用電力量と推定しこれと右四月以降の二千八百三十七キロと合算すると同年分の使用量は三千五百十七キロであり、一キロ当りの加工賃は被告田代の分と同比率で金四十三円九十五銭としてこれを計算すると同原告の同年分の収入は合計十五万四千五百七十二円となる。

これに対する原告の必要経費を算定してみるに特別の事情のない限り当時の統制価格を基準として原告主張の使用量を基として計算すると、

(一) 消耗品として電気料、一万七千六百五十一円、機械油三百二十円、グリス六百円、ワツクス三百六十円、麺結紙一千二百八十円、石油四百六十五円、ベルト千五百円合計金二万二千百七十六円となる。

(二) 公租公課の中原告主張の村民税、狩猟税、犬税はいずれも原告の営業に関係ないからこれを除外して、地租及附加税百六十円、家屋税及附加税百六十八円、第一種事業税及附加税二万六百二十五円、自転車税百二十円、リヤカー税百二十円以上合計金二万一千百九十三円となる。

(三) 固定資産の減価償却については原告が昭和二十五年十月固定資産税に関し下江川村長に提出した償却資産申告書によるとモーター三千円、精米機三千円、精麦機千五百円製粉機一万五千円、製麺機八千五百円、製麺干器八千九百二十五円(これは原告が八千五百円の製麺機を二万円と主張するのに鑑みて過大の評価とみてこれと同比率に評価した)この合計額は三万六千九百六十五円であるが一割を控除した金三万三千二百六十九円を定額法による基礎金額とし耐用年数を二十五年とすると償却額は一千三百三十一円となる。次にはかりまち取得価格五千円(原告の主張による)一割を控除し耐用年数を十年として償却額四百五十円、自転車取得価格七千三百四十五円(統制額)の一割を控除し耐用年数を八年とすると償却価八百二十七円、リヤカー五千六百十八円(統制額)一割を控除し耐用年数八年(以上いずれも耐用年数は当時施行された法人税の規定を類推)として償却額六百三十三円以上合計一千九百十円となるが、この中半額は農業所得(標準率によるからすでに控除してある)から控除するのが相当であるから半額を前記一千三百三十一円と合計すると二千二百八十六円となる。

(四) 作業服代、原告が審査請求において主張する額は七千三百二十円で作業衣四着で一着千二百円として四千八百円手袋四足で一足五十円で計二百円(以上は原告主張通り)手拭四本一本四十三円十三銭で計百七十二円五十二銭、地下足袋四足一足百八十五円計七百四十円(以上統制額による)以上合計金五千九百十二円五十二銭であるが地下足袋は農業用として除外しその他は半額を本件営業用経費と認めその額は二千五百八十七円となる。

(五) 家屋の減価償却、原告の住家、工場納屋の賃貸価格は五十四円であるからこれに財産税法第二十五条及第二十六条による評価倍数百を乗じた金五千四百円を取得価格とし一割を控除した価格四千八百六十円に耐用年数を二十年とすると定額法による償却額は金二百四十三円となる。右の外前記必要経費の合計額の一割の金五千円をその他の必要経費として控除する。

以上によると原告鈴木の昭和二十四年度の所得額は農業所得金十一万七千三百五十五円九銭であり、営業所得は金十万一千八十七円であるから右合計額は二十一万八千四百四十二円九銭となるから原告の所得金額を金十九万八千五百円とした審査決定額は相当であると主張した(証拠省略)。

三、理  由

第一、原告田代の請求について判断する。

(一)  原告田代が昭和二十四年度の所得額を所轄氏家税務署長に対して確定申告をしたところ右税務署長は昭和二十五年二月二十六日右所得額を金三十三万九千三百円(その後金三十万四千円に訂正された)と更正決定したが原告はこれに不服であつたので被告に対し右所得額について審査請求をなした。よつて被告は昭和二十六年五月二十一日右所得金額を金三十万四千円と審査決定をなし、原告に同年六月七日その旨の通知をしたことは右当事者間に争がない。

(二)  よつて被告の右原告に対する右昭和二十四年度の所得に関する右の審査決定額の当否について審究する。

(イ)  まず原告田代の精米、精麦、精粉製麺加工業の営業所得について検討する。

甲第四号証の成立に関する証人仁衡道由の証言並原告田代の本人尋問の結果は俄かに採用できないから同号証は本件事実認定の資料となしがたい。しかしてその他には原告の右営業に関する昭和二十四年度の所得を確実に認定するに足る確証がないから同原告に対する昭和二十四年度の営業所得に対しては推計による外ないものと言わねばならない。よつて被告が前記審査決定をなすに当つて採用した推計方法の当否について稽えてみる。原告田代の昭和二十四年度の右営業に関する電力の使用量が六三〇九キロであることは同原告の自認するところである。

しかして成立に争のない甲第一号証並証人平出康次同森角袈裟男の各証言並原告鈴木善一の本人尋問の結果(精米、精麦、製粉に用する各一俵当り使用電力量について)を総合すると次の通り認定することができる。

原告田代の前記使用電力量の中、各品名別の一年間の各使用電力の比率は精米が二十五パーセント、精麦が四十三パーセント、製粉麺が三十二パーセントであること、一俵当りの使用電力量は精米が一キロ、精麦が五キロ、製粉麺が七キロで一俵の加工賃は精米が五十円、精麦が百円、製粉麺が五百円であつてこれによつて使用電力量の比率による一キロ当りの加工賃は四十三円九十五銭であることが計算上明かである故右六千三百九キロの使用電力量による一年間の総収額は二十七万七千二百八十円となる。

前掲挙示の証拠並証人仁衡道由の証言及原告田代平の本人尋問の結果中右認定と牴触する部分は採用しない。

又原告田代は同原告の昭和二十四年度の電力使用量は昭和二十三年度のそれの約倍量であるからその所得も昭和二十三年度の約倍額と査定すべきであると主張するけれども、前記の説明に徴すればその理由のないことは自ら明瞭である故右原告の主張は採用しない。

(ロ)  次に右収入額から控除すべき必要経費について考えてみるに原告田代は審査請求に当つて公租公課を金三万一千八百七十六円と主張したのに対して被告は金三万二千六百十円と多額に容認しているからこの点については原告は何等異議ないものと考える。

又被告の主張によると事業用固定資産の減価償却については昭和二十四年度当時施行の所得税法には事業所得を計算する際これを償却することについては何等明定してなかつたが被告は当時施行されていた法人税法並その関係法令を類推的に適用してこれが償却をするのを相当と認めたので所謂定額法によつて即ち償却資産価格から耐用年数を経た後の残存価格としてその一割を控除し残余の部分を各耐用年数で除した額を償却額として控除する方法を採用したというにある故右の算定方法は所得税法に明定していなかつた以上違法ということはできないしむしろ被告の採つた右の方法は適当の処置であつたといわねばならない。

しかして証人平出康次の証言によると原告の事業用固定資産の取得価格は当時原告本人の主張を容れて製粉機七万円、製麺機二万円、精麦機一万円、精米機三千円、発動機一万五千円、計十一万八千円としこれに対する残存価格の一割を控除した十万六千二百円を右定額法による償却額の基礎金額としこれを前記法人税法並その関係法令によつて耐用年数を二十五年とし償却額を金四千二百四十八円、家屋工場の取得価格を二万三千五百円とし前記の通り一割を控訴した金額を前記同様耐用年数二十年としてこれを除して償却額を一千五十八円としたことが認められる。又右平出証人並証人森角袈裟男の証言によると原告主張のベルト類は消耗品と認めそれ等の消耗費は「その他」として合計三万一千四百八十四円として差引控除したことが認められる。

右の認定に反する前示甲第一号証、証人仁衡道由の証言及原告田代本人の供述部分はいずれも採用しない。

よつて原告田代の営業上の前記総収入額二十七万七千二百八十円から前記公租公課三万二千六百十円、固定資産の減価償却額五千三百六円消耗費その他の金三万一千四百八十四円を控除すると残額は二十万七千八百八十円となるから被告の審査決定に係る原告田代の昭和二十四年度の営業所得額を二十万四千七百円としたのは相当といわざるをえない。

(ハ)  次に原告田代の昭和二十四年度の農業所得について判断する。

原告は昭和二十四年度の農業経営は長男壮の経営であると主張するのでその点について審案するに成立に争のない甲第六号証、乙第十七号証の一、二、証人荒井錦平同田代壮の各証言、原告田代本人の供述を総合すると原告田代平所有名義にかかる田畑に対する農業経営は昭和二十三年度までは父親の原告平が経営してきたが原告平の妻と長男壮とは旧民法にいわゆる継母子関係にあつてその折合が悪かつたので昭和二十四年度からは農業経営は長男壮が当り精米業は父親平が経営することに右親子間に合意が成立し各その生計を別にし昭和二十四年度より実際上それぞれ右の通り経営に当つたことが認められる。被告は企業主体が何人であるかはその企業の支配関係及資金関係によつて判定さるべきであると主張し前記事実摘録(一)乃至(七)の事実関係を挙げた。

しかし思うに重労働を必要とする農業経営には年齢的に言つても稼働能力のあるものと推定できる原告の長男壮が当るのが適当であるし且父親の稼業をその子が承継するということは自然の法則でもある故これ等の事実と前記認定の原告田代家の特殊の家庭の事情並弁論の全趣旨に徴して明なその後の経営状態等併せ考えると前記認定の通り昭和二十四年度の本件農業経営の主体は原告平の長男壮であるとみるのが相当であつて、被告の挙げた前記(一)乃至(七)の事実は論理上いずれも前記認定を覆さなければならない決定的の事由とはなり得ないものと考える。又成立に争のない乙第三号証第八号証第九号証第十三号証の一乃至四第十四号証第十六号証当裁判所が成立を認める乙第四、五号証第六号証の一、二第十号証第十二号証第十五号証のみによつては右の認定を左右することはできない。

これを要するに政府は徴税行政の上から言つて実態を調査して真実の所得者から徴税すれば足りることであつて、従来の行きがかりにのみとらわれて徒らに事端を繁からしむる必要は毫もないと考える。

叙上の次第であるから被告が原告田代平の昭和二十四年度の所得金額を金三十万四千円としての決定は右認定の金二十万四千七百円の金額を超える部分は取消すべきである故右限度において原告田代の請求部分は理由があるが、その余の部分は理由がないから棄却する。

第二、原告鈴木善一の請求について判断する。

(一)  原告鈴木が昭和二十四年度の所得額について所轄氏家税務署長に対し金十万七千八十八円として確定申告をなし同税務署長は昭和二十五年二月二十日右所得額を金十八万三千百円と更正決定をした。原告はこれについて被告に対し昭和二十五年三月六日審査請求をしたので被告は昭和二十六年五月二十一日右所得額を金十九万八千五百円と審査決定して原告にその旨の通知を同年六月七日したことは本件当事者間に争がない。

(二)  よつて被告のなした右審査決定の当否について判断する。

(甲)  原告の農業所得について。

原告鈴木の全立証によるも同原告の農業所得の実額が同原告が被告に対し審査請求をした所得額の通りであることを確認する資料がないから同原告は推計課税をされるも又止むを得ないところと謂わねばならない。

一、しかして成立に争のない乙第六、七号各証並証人平出康次同森角袈裟男の各証言によると同原告の農業所得については前記の通り実額調査をする資料がなかつたためその管内の中庸農家を選択してその者について坪刈、俵調、作付状況の調査及帳簿の調査等の精密な実額調査を基準として算出した農業所得標準率に基き推計課税の方法を採り同原告の昭和二十四年度水稲耕作面積六反八畝三歩(同生産石数十六石三斗六升)については一石当り二千六百五十円、同二毛田面積五畝二十八歩については一反当り二千五百六十八円同普通畑の面積五反九畝七歩については一反当り六千円の各右原告の居住部落の標準率に基いて算定した所得額は合計八万二百七十七円であることが認定できる。

この点について原告鈴木は右標準率を採用したのは相当でないというけれども標準率の性質上これは採用しない。

二、成立に争のない甲第一号証によると原告は附随収入として俵代千三百七十五円、鶏六千円、豚六千七百九十七円計一万四千百七十二円のあることが認めうる。

三、成立に争のない乙第五号証によれば原告鈴木は昭和二十四年度中に被告主張の通り(事実摘録二ノ丙記載)合計金二万二千九百六円九銭の昭和二十三年度の追加払及昭和二十四年度の超過供出代を受領していることが明白であつてこの点に関する原告鈴木本人の供述(第二回)は採用しない。

よつて原告鈴木の昭和二十四年度の農業所得は合計金十一万七千三百五十五円であることが明かである。

なお原告鈴木は公租公課の中地租税附加税、家屋附加税、牛馬税第二種事業税は農業経営の必要経費として控除すべきであると主張するけれども前記標準率による収入は農業経営に必要の経費を控除した純収入の標準額であるから右の主張は採用しない。

(乙)  原告鈴木の営業所得について。

同原告はその営業による実額所得算定の資料として甲第二号証を提出しているが原告鈴木の本人尋問の結果(第二回)によると右甲第二号証は同原告の受託台帳ではあるが毎日取引の都度記載したものでなく同原告が後日まとめて記載した帳簿であることが明白である故同号証の記載は措信しがたくその他には原告の右所得の実額を確認する資料がないから同原告に対しては営業所得についても推計課税による外ないものと言わねばならない。

一、証人平出康次同森角袈裟男の各証言、同証言により成立を認めうる乙第一号乃至第三号各証を総合すると原告の昭和二十四年四月から同年十二月までの電力の使用量は二千八百三十七キロであり、同年一月から三月までの分は同原告が定額であつたため使用量が判明しないので同地方における同業者五名の右期間中における電力使用量の比率(二十四パーセント)を算定しこの比率を原告の前記一月から三月までの使用量として推定し、これと前記四月以降の分と合算すると合計三千五百十七キロとなるのでこれを同原告の昭和二十四年度中の電力使用量と算定した。しかしてその一キロ当り加工賃は前記原告田代平の加工賃と同様四十三円九十五銭としこれを右使用量に乗ずると原告鈴木の昭和二十四年度の総収入額は十五万四千五百七十二円となることが計算上明瞭である。

これに対して原告鈴木は電力には三相と単相とがありその力量に差違がある旨主張するけれども標準率を算出するにはその中庸のものを基準として算定する外ないものと言うべきである故右の主張は採用しない。

又同原告は同地方の手持米は玄米四斗三升が一俵であり大麦は一俵が五斗六升であり、小麦は一俵が四斗五升であるのを被告は米一俵を四斗とし麦一俵を五斗として前記の推計をしたのは不当であるというが原告鈴木が加工したものがいずれも原告主張の通りであつたことについては何等の証拠資料がない故これも採用しない。

二、次に原告鈴木の前記営業に対する控除すべき必要経費について考えてみる。

(一) 消耗品について被告は電気料二万七千六百五十一円、機械油三百二十円、グリス六百円、ワツクス三百六十円、麺結紙一千二百八十円、石油四百六十五円、ベルト一千五百円合計金二万二千百七十六円と算定した。

これについて原告鈴木の主張は右の算定は統制価格を基準としているが当時は石油等の配給量が少なく闇値で購入したから消耗費の実際の支出額は被告の右算定額以上であるというにあるが原告鈴木の本人尋問の結果並にその他の立証によるも原告鈴木が右被告の算定以上に消耗品に対する支出をした事実を確認する資料は全くないからこの点の原告の主張も採用できない。

(二) 公租公課について原告は二万八千百十九円と主張するが被告は地租附加税百六十円、家屋税及同附加税百六十八円第一種事業税及附加税二万六百二十五円、自転車税百二十円、リヤカー税百二十円合計二万一千百九十三円と算定した。しかして成立に争のない甲第四号証第五号証の一、二同第六号証により原告が納付したと認めうる村民税、狩猟税、犬税はいずれも原告の事業に必要と認めえないし、牛馬税、及第二種事業税は農業所得の必要経費とすべきであり且地租及附加税、家屋税及附加税、自転車税、リヤカー税は営業のための必要経費であると共に農業所得のための経費とも認められるからその半額を右営業所得の必要経費として算定するのが相当と考えられるから右被告の控除額の算定は相当であると言わねばならない。

(三)  固定資産の減価償却については成立に争のない乙第四号証によると原告の取得価格はモーター三千円、精米機三千円、精麦機一万五千円、製粉機一万五千円、製麺機八千五百円、であることが認められるし且製麺干器は原告は取得価格を二万一千円と主張するがこれを認めうる資料がないから被告の承認する金八千九百二十五円とすると以上合計三万六千九百六十五円となりこれから一割を控除した三万三千二百六十五円を前記定額法による基礎金額とし且前記当時施行の法人税法並その関係法令を類推適用して耐用年数を二十五年とすると償却額は一千三百三十一円となり、なお、はかり、ますの取得価格は原被告間争のない五千円とし自転車は七千三百四十七円リヤカーは五千六百十八円の小売の統制価格で取得したものとし右についても定額法により前示各法令を準用してその所定の耐用年数で算定すると償却額は一千九百十円となるがこれは農業用にも使用するものと認められる故その半額を本件営業用とすると右一千三百三十一円と合算して二千二百八十六円の減価償却額となるものと言うべきである。

(四)  家屋の減価償却について考えてみるに成立に争のない乙第八号証によると住家一棟二十坪精米所一棟十四坪納屋一棟二十四坪合計坪数六十坪の建物の賃貸価格は五十四円であるから財産税法第二十五条第二十六条による倍数百を乗ずると取得原価五千四百円となる。よつて定額法によつてその一割を控除した基礎価格を四千八百円とし前示法令に基く耐用年数二十年とすると償却額は二百四十三円となる。原告が審査請求において主張する償却額はその根拠と資料がないから採用できない。

(五)  作業服について原告は七千三百二十円と主張し被告は右の中作業衣四着一着千二百円とすると計四千八百円手拭四本一本四十三円十三銭として計百七十二円五十二銭、手袋四足一足五十円として二百円合計五千百七十二円五十二銭となるがその半額が本件営業用の経費とみると金二千五百八十七円となるほかその他の原告の審査請求で主張した作業費については原告の証拠資料では確認しがたいからこれは採用できない。

(六)  右の外被告は前記必要経費の合算額の約一割の五千円をその他の必要経費として控除したことが窺える。

以上の通りであるから前記営業上の総収入額十五万四千五百七十二円から右の必要経費合計金五万三千四百八十五円を控除した残額十万千八十七円が原告鈴木の昭和二十四年度の営業所得と言うことができる。

従て前記認定の農業所得十一万七千三百五十五円と右営業所得十万千八十七円とを合計すると二十一万八千四百四十二円となるから被告が原告鈴木の昭和二十四年度の所得額を金十九万八千五百円と決定したのは相当である。

故結局同原告の本訴請求は理由がないことに帰するからこれは棄却を免れない。

よつて民事訴訟法第八十九条第九十二条を各適用して主文の通り判決する。

(裁判官 佐野英雄)

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